塩麹が流行りはじめたころ、「お肉が劇的に柔らかくなる!」と沢山の人が塩麹の存在を知ることになりました。体によい発酵食品を日常の食生活に取り入れることはとてもよいことです。
塩麹にニンニクが入るともっといいことがあるのでは、と思いつき、そこからスタートしました。新しい商品をつくるときは必ずお客さまの声を聞き取ります。今回も100人以上のお客様に塩麹を使っているかどうか、どのような使い方をされているのか、ヒヤリングをしたところ、意外な声が多かったことに驚きました。
「一度は買ったものの冷蔵庫で何ヵ月もそのまま放置した状態になり廃棄してしまった」「使い方がいまいち分からないから使いきれない」「お肉ばかりそんなに食べない」…
確かにお肉が柔らかくなるからといって、柔らかくしなくてはならないお肉をそう毎日食べることもないですよね。でもこれでは、せっかくの塩麹がもったいない。
新商品の方向性を決めました。
「冷蔵庫で余らない塩麹」「そのままでも使える塩麹」「時間が経てば経つほど旨味が増す塩麹」、そしてなによりも「にんにく臭が残らないにんにく塩麹」を作ろう!
そう思い立ち、最高の麹を探す旅が始まりました。
麹選びは、水選び。水が綺麗な所のものから試しはじめました。
富士山の天然水が涌き出る所の米麹が一番だ!と思い、その麹で塩麹を自分でも作ってみました。そこに青森県産にんにくを加えて何度か試作してみましたが、なんとなくしっくりきません。
お互いの良さを引き出し合わないというか、変な言い方をすれば、どこか他人行儀な印象。
水も麹もニンニクも最高のものなのに…。
私はお米マイスターの資格を持っているのですが、ふと、過去に高級ブランド米を作ったときのことを思い出しました。
《米が育った水を使って炊くと美味しくなる》
そうなんです。育った場所の水には、その地域特有のミネラル成分が含まれています。米は成長する過程で特定のミネラル成分に慣れていて、お米を炊く時にも同じミネラルバランスの水を使うと、お米本来の風味が引き出されやすくなります。
そう考えると、それぞれの品質が最高だといっても、その組み合わせが必ずしも最高になるとは限らないのです。
そう思いを巡らしているときに、岩手県主催イベントで八幡平を案内していただく機会がありました。八幡平を訪れるのは初めてで、そのワクワク感だけで向かったのですが、思いがけない大きな収穫がありました。最初に訪れたのが鱒の養殖場とクラフトビールの醸造工場でした。距離が近いところにあることと、どちらにもブナの原生林から涌き出る日本名水百選に数えられる「金沢清水」の水を使っていることを聞き、頭の中で何かが鳴り始めました。
麹の味噌屋があるとも聞いていたので、そこも同じ名水で育った米から麹を作っているのでは、と期待に胸が膨らみはじめました。そして、その期待はまさに的中しました。最高に美味しい味噌と麹を丁寧に作られているところに出遭えたのです。
富士山の名水も同じくミネラル豊富で最高の水ですが、残念ながら富士山の界隈には十分な量のニンニクを作っている農家さんがいません。
岩手県八幡平の場合は、すぐ隣が青森県、にんにくの名産地です。
限りなく近い所で作られた素材を合わせたらどんなにか美味しいものが出来るだろう、ということで、早速試作づくりを再開。ところが順調には進みません。どうしても時間が経つとニンニクの臭みが増してしまい、一緒に発酵することの良さが出てこないのです。
毎日食べてほしい。でも、臭いは残したくない。
塩麹が毎日は使われず、数回使ったらいつの間にか冷蔵庫で在庫になってしまいがちだから、時間が経つ毎に美味しさが増すようなものにもしたい、という希望もなんとか叶えたい。
なんとか理想のものができるように、さらに、塩とニンニクのベストな割合を追求しました。塩分をギリギリまで抑えるのではなく、にんにくの量を最大限まで増やし、塩麹なのに塩よりにんにくの配合量を多くしています。にんにくの臭い戻りを防ぎ、そのまま生で食べても美味しく味わえる絶妙な火入れと配合バランスにたどり着きました。こうして、時間の経過と共に変化する美味しさを楽しんでいただける、にんにく/麹/塩の三位一体ならぬ三味一体が実現しました。
このように誕生したアホこうじを、塩の代わりに、にんにくの代わりに、旨味だしの代わりに、毎日使っていただきたいです。お子さんでも簡単に使えて、思わず料理がしたくなるくらい手軽に使える美味しいニンニク塩麹です。
お店で購入されるときに「帰りに野菜を買って帰る!」とおっしゃるお客さまも多いです。
にんにくを中心にして、麹や野菜などバランスよく美味しいお料理ができるアホこうじは、健康的な毎日を応援する万能調味料です。